化粧品を倉庫で管理するためには、「化粧品製造業許可」の取得が必要です。化粧品製造業許可は薬機法に基づき、化粧品の製造や保管が適切に行われることを証明する許可です。
当記事では、化粧品製造業許可の取得要件と、倉庫での化粧品管理における注意点を詳しく解説します。適切な手続きを踏むことで、法的リスクを回避し、化粧品の品質と安全性を保つ方法を学びましょう。化粧品の適切な倉庫管理は、企業の信頼性向上にもつながります。
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化粧品を倉庫で管理するには許可が必要?保管する際の注意点も解説
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2024.08.09
目次
化粧品を倉庫で管理するには「化粧品製造業許可」が必要
化粧品を倉庫で管理するためには倉庫業登録のみではなく、化粧品製造業許可を取得する必要があります。化粧品製造業許可とは、薬機法に基づいて化粧品の製造を行う場合に取得する許可です。化粧品製造業許可のみを取得して製造した化粧品は、製造販売業者または製造業者に対してのみ販売できます。
(出典:神奈川県「化粧品の製造、輸入または製造販売等について」https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n3x/yakumu/kyoninka/kesyohin.html)
薬機法では市場出荷判定の合格までに発生する以下の作業も製造工程の一部と考えることから、流通加工を担当する倉庫も化粧品製造業許可の取得が必要です。
- 梱包
- シール、ラベル貼り付け
- 保管
薬機法とは、医薬品・化粧品・医療機器などの製造販売や広告活動に関するルールを詳細に定め、安全性の確保を目指す法律を意味します。化粧品製造業許可に関係する薬機法の条文は、以下の通りです。
医薬品、医薬部外品又は化粧品の製造業の許可を受けた者でなければ、それぞれ、業として、医薬品、医薬部外品又は化粧品の製造をしてはならない。 |
(引用:e-GOV法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(第十三条)」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000145 引用日2024/07/04)
化粧品製造業許可を取得した倉庫では、顧客から以下の依頼を受けた際にも柔軟に対応できます。
- ギフトセットにノベルティを同梱する
- 出荷用の化粧箱に詰め替える
- 化粧箱の破損や汚れがあった際に交換する
化粧品製造業許可を取得しないで上記の業務を担当した倉庫には、法的な罰則が課されます。化粧品製造業許可を持たない倉庫に作業を依頼した企業も、法的な責任を問われるため注意しましょう。
化粧品製造販売業許可との違い
化粧品の製造や販売に関係する許可には、化粧品製造業許可のほか、化粧品製造販売業許可があります。化粧品製造販売業許可とは、自社ブランドの化粧品を出荷する際に取得が必要になる許可です。化粧品製造販売業許可のみを取得しても、化粧品の製造は行えません。
以下は、薬機法における「化粧品製造販売」の定義を示します。
この法律で「製造販売」とは、その製造(他に委託して製造をする場合を含み、他から委託を受けて製造をする場合を除く。以下「製造等」という。)をし、又は輸入をした医薬品(原薬たる医薬品を除く。)、医薬部外品、化粧品、医療機器若しくは再生医療等製品を、それぞれ販売し、貸与し、若しくは授与し、又は医療機器プログラム(医療機器のうちプログラムであるものをいう。以下同じ。)を電気通信回線を通じて提供することをいう。 |
(引用:e-GOV法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(第三条第十三項)」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000145 引用日2024/07/04)
例えば、自社で輸入した化粧品を自社製品として販売する場合には、化粧品製造業許可と化粧品製造販売業許可の両方が必要です。化粧品製造業許可を取得している他社に製造を依頼し、自社製品として出荷することは、化粧品製造業販売許可のみを取得すれば行えます。
(出典:神奈川県「化粧品の製造、輸入または製造販売等について」https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n3x/yakumu/kyoninka/kesyohin.html)
そもそも化粧品の定義とは?
化粧品製造業許可や化粧品製造販売業許可は、薬機法が定義する化粧品が対象です。薬機法では、化粧品を以下の通りに定義します。
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。 |
(引用:e-GOV法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(第二条第三項)」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000145
引用日2024/07/04)
上記の定義に従うと、石鹸・シャンプー・歯磨き粉なども化粧品の一種です。ただし、疾病の予防・改善につながるものや身体の機能に直接影響するものは化粧品ではなく、医薬品や医薬部外品に含まれます。例えば、厚生労働省の認可した有効成分が一定濃度で配合されたニキビ対策用の石鹸は、化粧品に該当しません。
化粧品製造業許可の取得に必要な要件
化粧品製造業許可を取得する際には、人的要件と設備要件の両方を満たし、都道府県所定の書類を用意して提出する必要があります。人的要件と設備要件の概要は、以下の通りです。
人的要件
化粧品製造業許可を取得するためには、現場の管理責任を担当する責任技術者を配置する必要があります。責任技術者に選任する人の条件は、以下の通りです。
2 化粧品の製造業者は、法第十七条第十項の規定により、次の各号のいずれかに該当する責任技術者を、製造所ごとに置かなければならない。 一 薬剤師 二 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者 三 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する科目を修得した後、医薬品、医薬部外品又は化粧品の製造に関する業務に三年以上従事した者 四 厚生労働大臣が前三号に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者 |
(引用:e-GOV法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(第九十一条第二項)/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336M50000100001 引用日2024/07/16)
社内の人材が上記を満たすかが分からない場合には、卒業大学、学科、職務経歴などを調査した上で、都道府県の担当窓口に問い合わせましょう。
複数拠点で化粧品の製造を行う場合には、製造所ごとに化粧品製造業許可を取得するため、1か所の製造所に1人の責任技術者を配置する必要があります。同一地域に複数拠点を設置し、化粧品の製造を行う場合も、責任技術者の兼任は認められません。
設備要件
化粧品製造業許可には、製造工程全般を行うための「一般区分」と、完成した化粧品の梱包・ラベル貼り・保管などのみを行うための「包装・表示・保管区分」の2種類があります。化粧品を倉庫で保管・管理する際には、包装・表示・保管区分の設備要件を満たし、化粧品製造業許可の取得が必要です。
包装・表示・保管区分の設備要件は、薬局等構造設備規則によって以下の通りに規定されています。
一 製品等及び資材を衛生的かつ安全に保管するために必要な構造及び設備を有すること。 二 作業を適切に行うのに支障のない面積を有すること。 三 製品等及び資材の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること。ただし,当該製造業者の他の試験検査設備又は他の試験検査機関を利用して自己の責任において当該試験検査を行う場合であつて、支障ないと認められるときは、この限りでない。 |
(引用:和歌山県福祉保健部健康局薬務課「化粧品ハンドブック」https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/050400/seizou/seizoutop_d/fil/keshouhin_handbook_ver4.pdf 引用日2024/07/16)
化粧品製造業許可を取得する際の提出書類は都道府県によって異なるものの、多くの場合、構造設備の概要一覧や建物の配置図などが含まれます。「化粧品を衛生的かつ安全に保管できる構造設備が整っている」と判断できない場合、化粧品製造業許可の取得が不可能です。
化粧品製造業では、製品の容器・ラベル・見た目・成分などの検査を自社設備で行うことが理想とは言え、小規模な倉庫や企業の場合、対応できないケースも多いでしょう。そのため、薬局等構造設備規則では「支障がない」と言える範囲で外部の分析機関を利用し、必要な検査を外注する方法も認めています。
化粧品を倉庫で管理する場合に押さえておきたい注意点
化粧品を倉庫で管理する際やアウトソーシングする企業を選択する際には、注意点がいくつかあります。以下のポイントに注意して自社での管理やアウトソーシング先の選択を行い、法令遵守の経営を実現しましょう。
適切な保管環境か
化粧品はデリケートな製品であるため、倉庫内の環境整備に気を配り、適正に管理する必要があります。外部企業に管理を依頼する場合には、倉庫内の温度や湿度を常時管理し、適正に維持できていることを確認しましょう。
化粧品は紫外線によって品質が変化する場合もあるため、直射日光の当たらない場所での管理が基本です。窓のある倉庫を利用する際には遮光材を利用し、日光が遮られていることを確認してください。
化粧品の劣化を防止するためには、倉庫内の防塵・防虫・防鼠対策も欠かせません。衛生面に対する配慮が十分に取られた倉庫を利用すれば、劣化リスクを軽減できます。
ロット管理が徹底されているか
化粧品を長期間保管すると劣化するため、製造番号や製造記号の明記が義務付けられています。劣化を回避するためには、製造番号や製造記号によるロット管理を徹底し、「先入先出」のルールを守って出荷しましょう。
ロット管理とは、一定の条件のもとで同一商品を「ロット」と呼ばれるグループに分け、ロットごとの管理を行う手法です。化粧品を管理する倉庫ではロット管理を適切に実施する目的で、以下の専用システムを活用することもあります。
- 倉庫管理システム(WMS)
- バーコードシステム
- ERPシステム
在庫管理システムを導入している倉庫では、商品の保管場所が明確になり、ピッキング作業を効率化できるメリットもあります。ERPシステムを導入すればロット管理で発生する業務の一部を自動化し、ヒューマンエラーの抑制が可能です。
危険品として取り扱うものはあるか
消防法では、以下に該当する商品を「危険物」と指定し、取り扱いに一定のルールを定めています。
- 火災の発生リスクが高い
- 火災が発生した場合、被害を拡大させるリスクが高い
- 火災が発生した際の消火が困難である など
香水、クレンジングオイル、ヘアオイルなどは上記に該当し、危険物とみなされる可能性があります。危険物を指定数量以上取り扱う場合には、消防法の基準に沿った施設で管理を行うことが必要です。指定数量未満を取り扱う場合にも、市町村条例に沿った対処が要求されます。
危険物の管理に対応できる施設を自社で建設する場合、多くの時間とコストが必要です。危険物に該当する化粧品を取り扱う場合には「危険物倉庫」を探し、アウトソーシングする方法をおすすめします。
(出典:総務省消防庁「危険物保安室」
https://www.fdma.go.jp/about/organization/post-6.html)
(出典:e-GOV法令検索「消防法(第三章 危険物)」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC1000000186_20240401_505AC0000000058)
まとめ
化粧品を倉庫で管理するには、「化粧品製造業許可」の取得が不可欠です。適切な保管環境の維持、ロット管理の徹底、危険物の取り扱いなど、管理には多くの注意点があります。これらのポイントを押さえることで、法令遵守と製品の安全性を確保できます。自社での対応が難しい場合は、専門の倉庫にアウトソーシングするのも1つの方法です。
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